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糖尿病治療への新たなアプローチ

日進月歩の新薬業界ですが、今までにないユニークな作用機序を持つ
糖尿病治療薬が登場するかもしれません。
エネルギー合成の要である「ミトコンドリア」に働きかけ、
合併症予防や膵臓細胞の保護といった効果が期待されています。



2016年の「国民健康・栄養調査」では、糖尿病有病者、
予備軍合わせて2,000万人と推計されており、増加傾向にあります。

糖尿病は、血糖値が高い状態を指し、膵臓から分泌される
インスリン(血糖値を下げるホルモン)分泌の低下や
効きが悪くなる(インスリン抵抗性)ために起こります。

治療せずに放置すると、血中にあふれた糖による活性酸素
が血管を傷つけてしまいます。
その結果、神経障害や、腎臓を障害し、透析の原因疾患の1位でもあります。
また、その他にも心筋梗塞や脳梗塞など
致命的な経過につながる恐れもあります。

初期症状として頻尿や多飲、手足のしびれ、
多汗、皮膚乾燥やかゆみがあります。
健康診断でも空腹時血糖の測定が行われることが多く、
異常を指摘された場合は速やかに医療機関を受診しましょう。

さて、糖尿病の治療薬ですが、これまでにインスリンの注射や、
インスリン分泌を促したり、働きを良くする飲み薬などがありました。

しかし、昨年末に大日本住友製薬より、新たな糖尿病治療薬
としてPoxel社と共同開発を進める「imeglimin」について、
2020年度中の承認申請を目指すとの発表がありました。

imegliminは、既存の薬剤とは全く異なるアプローチを
持っていることでも注目されています。

同薬は細胞内ミトコンドリアに作用し、
その機能を改善することで血糖値を下げる作用を示すと考えられます。

ミトコンドリアは主にエネルギーを効率的に供給する働きを持ち、
他にも一部の生体物質の合成や、カルシウムなどの細胞内濃度調節、
細胞周期や細胞死の調節にも関与しています。

糖尿病では、インスリンを放出する膵臓β細胞の機能が低下しています。
これは、インスリン放出のエネルギーを産生する
ミトコンドリアの働きが低下していることが一因です。

imegliminは膵臓だけでなく、肝臓・筋肉にも作用し、
インスリン分泌の促進や、インスリン抵抗性の改善、
さらに、過剰な糖を作り出す糖新生の抑制といった多角的なアプローチを持ちます。

この働きにより、動脈硬化や心血管系の合併症予防や、
膵β細胞の長期的な保護といった独自の効果が期待されています。

日本でもすでに臨床第3相試験を終えており、
長期の有効性が確認されたと報告されています。
順調に進めば、今年中に新薬承認申請が行われるとのことです。