イブプロフェンで悪化?新型コロナウイルスへの影響は「調査中」:WHO
世界保健機構(WHO)は、新型コロナ感染の疑いがある場合は
医師の指示なく抗炎症薬「イブプロフェン」の服用をしないよう注意を促しました。
新型コロナ感染の疑いがある場合に、抗炎症薬「イブプロフェン」を使用すると
症状を悪化させるおそれがあるとする指摘が出ていることについて、
世界保健機構(WHO)報道官は
「致死率が増すなどといった危険性を証明する結果はなく、WHOの専門家が調査を進めている段階だ」
としながらも、ウイルスに感染している疑いがある場合においては
「イブプロフェン」ではなく「アセトアミノフェン」の使用を勧めるとしています。
■痛み・発熱のしくみ
体内でアラキドン酸という物質がシクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素の働きで
プロスタグランジン(PG)が生成されます。
PGは痛みや炎症を引き起こすだけでなく、発熱も引き起こします。
■薬の作用機序
イブプロフェンは非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の1つであり、
プロスタグランジン(PG)を生成を助けるシクロオキシゲナーゼ(COX)の働きを阻害することで
PGの生成を抑え、痛みや炎症、発熱の症状を緩和させます。
アセトアミノフェンはイブプロフェンと異なり非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に分類されていません。
鎮痛・解熱作用を有しており、NSAIDsと同様にCOXを阻害しますが、その作用は弱く、
中枢神経におけるCOX阻害と考えられています。
しかし、未だ詳細な作用機序は解明されておらず、COX阻害を介さないと説明しているところもあるようです。
ちなみに、プロスタグランジン(PG)には胃粘膜を保護する作用もあります。
イブプロフェンのようなCOX阻害によりPGの生成を抑制する薬を飲むと
胃が荒れてしまう原因にもなります。
病院で、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の解熱鎮痛剤と一緒に
胃を保護する薬が処方されるのはこのような胃が荒れる副作用を避けるためです。
ただし、今回のイブプロフェンの新型コロナウイルスへの情報については
もともと持病を持っている方が、自己判断で薬の服用をしたことや
SNSで偽の情報が出回ったことも影響しているようです。
毎日新しい情報が更新される中で、混乱を招く情報や報道もあります。
何が正しく、間違っているのか判断が難しい場合もありますが
情報に振り回され、疲弊してしまわぬよう判断力をみがくことが大切かもしれません。