甲状腺ホルモンと甲状腺疾患
ヨウ素系うがい薬(ポピドンヨードうがい薬など)は、少し前にウイルス予防効果有りとしてニュースに話題となりました。
しかし、ヨウ素系うがい薬の過度の使用により甲状腺機能に異常を引き起こすことがあります。
現在はだいぶ話題も少なくなっていますが、甲状腺は全身の調節をしている重要な臓器であるため、
この機会に甲状腺の働きや関連疾患について説明したいと思います。
【甲状腺とは】
(形) :気管をまたいで左右に羽を広げた蝶のような形。左葉と右葉がある。
(所在):のどぼとけの下
(機能):ホルモンの合成・分泌
甲状腺を構成する細胞には濾胞細胞(ろほうさいぼう)と傍濾胞細胞(ぼうろほうさいぼう)があり、
濾胞細胞が全体の90%を占める。
濾胞細胞では血液中のヨウ素から甲状腺ホルモンを合成分泌する。
傍濾胞細胞(C細胞)は、血中カルシウム濃度を調節するホルモン(カルシトニン)を分泌する。
【甲状腺ホルモンの働き】
甲状腺ホルモンにはT3とT4という2種類のホルモンがあり、作用の強さはT3のほうがかなり強力。
(作用)
・熱産生作用 :脳・リンパ節等を除くほぼ全ての組織で酸素消費量を増加させる。
・タンパク質代謝作用:タンパク質の分解を促進する。
・糖質代謝作用 :糖質吸収の増加、グリコーゲン(貯蔵されている糖)→ブドウ糖(すぐ使える状態の糖)への転化を促進し、血糖値の上昇をもたらす。
・脂質代謝作用 :中性脂肪、コレステロールを低下させる。
・心臓への作用 :アドレナリンβ受容体の作用を増強させ、心収縮力・心拍数を増加させる。
・成長促進作用 :身体と脳の発育時を促進する。
【甲状腺疾患】
甲状腺ホルモンが全身に作用していることから分かるように、
甲状腺に不調を来すと全身に不調が表れるため、症状に特徴が無く意外と気づきにくいのが甲状腺疾患です。
少しでも早く不調に気付けるように、甲状腺疾患とその症状の紹介をしていきたいと思います。
・バセドウ病
バセドウ病は代表的な甲状腺機能亢進症で、甲状腺ホルモンが過剰に作られてしまうことによる疾患です。
男性に比べ女性に多くみられ(男:女=1:5程度)、好発年齢は30~40歳代です。
(症状)
バセドウ病には、全ての症状が出るとは限りませんが、特徴的な三大主徴があります。
①甲状腺腫
甲状腺に腫れが認められる。
②眼球突出
他にも目の症状として瞼の腫れや複視が表れるとこもある。
③頻脈
以上の症状は特徴的ではありますが、
動悸・手足の震え・倦怠感・多汗・暑がり・体重減少などの病気と気づきにくい症状が多くあり、よく見られる症状の一つです。
・橋本病
橋本病は慢性的に甲状腺に炎症が起こる病気です。
女性に特に多くみられ(男:女=1:20程度)、好発年齢は30~40歳代です。
炎症の進行に伴い、甲状腺の機能が弱まり、甲状腺機能低下症(橋本病全体の10%程度)となることがあります
(症状)
甲状腺腫がみられます。
甲状腺機能低下症による症状としては、浮腫み・皮膚の乾燥・寒がり・体重増加・無気力・肩こりの悪化・月経異常などがみられます。
【甲状腺ホルモン関連薬】
甲状腺疾患に対する治療とし甲状腺ホルモンを補充する薬と、過剰分のホルモン合成を抑制する薬があります。
・甲状腺ホルモン薬
甲状腺ホルモンを化学合成したT3製剤T4製剤。
・抗甲状腺薬
甲状腺に取り込まれホルモン合成を阻害する薬や、T4からT3への変換を抑制(作用の強さT3>T4のため)する薬。
*今回紹介した甲状腺疾患の症状や身体の不調を感じた時には、自己診断せず医療機関での相談を推奨しております。