漢方薬で自分の体質に合った風邪治療ができます。
風邪薬をなんとなくで選んでいませんか?
漢方の考え方では同じ症状であっても同じ薬や治療をおこなうとは限りません。軽い倦怠感から咳、発熱まで似たような症状であっても一人一人の体質や体の状態に合わせていくつかの漢方薬の中からぴったりのものを選んでいきます。
中医学(漢方医学)における風邪
中医学では、人の身体は「気」「血」「水」の3要素から成り立つと考えられています。このうち「気」は生命エネルギーを表し、このうち身体を正常に保ち病気に対する抵抗力のことを「正気(せいき)」と言います。そして中医学では、病気は正気と邪気(病気の原因)との戦いであり自分の「気」が負けて風邪の原因である邪気が体内に入りこんでしまうことで風邪にかかる、と考えられています。
漢方薬を選ぶ前にチェックすべきこと
正気と邪気の戦いである風邪への対処法を考えるためには、正気と邪気の力関係を最初に把握することが大切です。つまり、正気がどれほどあるのか、邪気がどの程度まで体内に入り込んでいるかのバランスを見ていく必要があります。
自分のタイプを確認する
正気の強さによって「虚証」と「実証」の二つに分けられます。※中医学における「虚実」は正気と邪気のバランスで決まり同じ人でも変化していくものですが、日本漢方では体力が充実していれば「実証」とうように「虚実」を一定のものと考えています。以降では日本漢方の考え方の「虚実」で解説しています。
虚証タイプ
- ・疲れやすい
- ・汗をかきやすい
- ・顔色が悪い
- ・寒がり
- ・下痢しやすい
- ・静かで消極的な性格
実証タイプ
- ・疲れにくい
- ・汗かき
- ・顔がほてりやすい
- ・暑がり
- ・便秘気味
- ・活発で積極的な性格
風邪の病期を確認する
邪気の侵入の度合いは大まかなに3段階で考えることができます。「表」は皮膚、粘膜、筋肉、関節、手足、頭部などを、「裏」は消化管を指します。
初期(表証)
邪気はまだ体の表面で抑えられている段階です。
中期(半表半裏証)
邪気が体内、消化器にまで侵入し消化器症状を伴っている段階です。
回復期
邪気との戦いにより体力を消耗し胃腸が弱っている段階です。
「虚実」と「病期」の組み合わせから漢方薬を選ぶ
「虚実」と「病期」の組み合わせからよく使われる漢方薬を例に挙げています。
初期×実証
葛根湯
頭痛、首から肩のこわばり、筋肉痛、悪寒がある時につかう。
麻黄湯
汗はでないが悪寒、鼻詰まり、頭痛、発熱がある時につかう。
初期×虚証
麻黄附子細辛湯
悪寒、喉の痛みがある時につかう。
桂枝湯
悪寒、頭痛、のぼせがある時につかう。
中期×実証
麻杏甘石湯
ゼーゼーとした激しい咳がある時につかう。
小柴胡湯
胸や腹部が重く、時々の悪寒、微熱、食欲不振、咳がある時につかう。
中期×虚証
真武湯
疲れやすくめまい、冷え、下痢がある時につかう。
小青竜湯
水のような鼻水や痰がみられる、咳がある時につかう。
回復期×実証
清肺湯
痰が多く長引く咳がある時につかう。
麻杏甘石湯
ゼーゼーとした激しい咳がある時につかう。
回復期×虚証
補中益気湯
全身倦怠感、食欲不振、気力の低下がある時につかう。
真武湯
疲れやすくめまい、冷え、下痢がある時につかう。
今回は中医学での風邪の考え方を元に「虚実の証」と「病期」から漢方薬を選ぶ例を紹介しました。中医学では紹介して選び方以外にも様々な観点から個人の状態を診て治療を決めています。症状が重い、不安がある場合は自己診断は避け医療機関の受診をおすすめいたします。
参照:
https://www.kampoyubi.jp/learn/practice/01.html
https://www.kampoyubi.jp/learn/basic/03_2.html
https://www.tsumura.co.jp/kampo/nayami/kaze01.html