iPS細胞で発見!ALS治療に期待できる既存薬とは?
ALSなどの難病の治療薬のスクリーニングに、山中教授がノーベル賞を受賞したことでも話題になったiPS細胞が用いられています
今まで難しかった、病気の細胞を再現することが可能となり、効率的な臨床試験につながります。
ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、国の指定難病にも登録されており、
現在のところ有効な治療法に乏しい状況です。
しかし、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を用いたスクリーニングにより、
既存のパーキンソン病治療薬である「ロピニロール」
および慢性白血病治療薬の「ボスチニブ」の有効性が示唆され、
現在臨床試験(それぞれ慶應義塾大学、京都大学)が行われています。
平成25年の調査では9200人ほどのALS患者さんがいると報告されています。
ALSの症状としては、手足やのど、舌の筋肉などの筋肉がやせていき、
徐々に力が入らなくなっていき、会話や呼吸も障害されてしまいます。
これは、筋肉を動かす指令を出している神経(運動ニューロン)が障害を受け、
動的な命令が伝わらなくなりやせ細ってしまうためです。
原因は分かっていませんが、ALSの病態として異常タンパク質の蓄積や、
酸化ストレスの亢進、ミトコンドリアの機能低下による運動ニューロンの
細胞死があります
有効な治療法は確立されていないのですが、iPS細胞を用いた画期的なスクリーニング
により、既存の薬剤であるパーキンソン病治療薬のロピニロールと、
慢性白血病治療薬ボスチニブが候補にあがりました。
ALSは適切な病態モデルがなく治療研究が困難でしたが、
iPS細胞の様々な細胞に分化できる特性を利用し、ALS患者由来の組織より
運動ニューロンに分化させることで、病気の状態を再現しました。
実験により、どちらも従来の疾患への作用機序とは異なるのですが、
ロピニロールは活性酸素の抑制などによる神経保護作用、
ボスチニブは異常タンパク質の蓄積を防ぐことで、それぞれ運動ニューロンの
細胞死を抑制することが分かりました。
現在臨床治験は継続中であり、ALSへの有効性・安全性はまだ確認されていません。
しかし、iPS細胞を用いた革新的なスクリーニングは創薬の進化を予感させ、
既存の薬剤がALSなどの難治性疾患の新たな選択肢となる可能性があります。